2014年05月02日

「おひとりさま」への感想

一般財団法人とよなか人権文化まちづくり協会が発行している「じんけん ぶんか まちづくり」42号に「おひとりさまPart1 Part2」を見た理事の西村寿子さんが感想をお書きになっています。今回はその内容をご紹介します。

「おひとりさま」の”呪い”を解く?

『〜おひとりさまを生きる〜あなたは老後をどのように暮らしますか Part1 Part2』を見て


寺本知誕生100年プロジェクトの一環で発表されたDVD『人 とよなか 寺本知 つよく やさしく あたたかく』に制作協力されたビデオ工房AKAME エンドウノリコさんから新作上映の案内をいただいた。『おひとりさまを生きる〜あなたは老後をどのように暮らしますか Part1』(37分、2009年)に続くPart2(30分、2014年)である。2作ともドキュメンタリー作品だが、Part1では、一人暮らしの女性がどのような暮らし方を選んだのかを紹介している。持家、借家、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、NPOが運営するグループホームなど基本は自宅か自宅以外の施設かという選択肢になるが、施設といっても運営方針や必要経費など多様である。映像は一人ひとりの生活を丁寧に追っているが共通しているのは、時には人の手を借りながらも最後まで自分らしく生きようとするエネルギーである。


4月に向けて完成間近のPart2は、Part1をさらに押し進めて自宅で最期を迎えるという前提で毎日を送っている女性、実際に最期を迎えた女性を取り上げている。高齢者専用賃貸住宅で暮らす高木満里子さんは、Part1でも登場しているが、60代で夫のDVから逃れて一人暮らしを選び、それまでに積み重ねてきた周到な準備のもとで4年前から高齢者専用賃貸住宅で暮らしている。映像では、少し不自由に見える身体だが80歳を過ぎた今も併設施設でボランティアをしている姿が映し出される。エンドウさんによると、高木さんは4年前にこの住宅に決めるまでおよそ10年の時間をかけたという。また、この住宅は、最初からすべてのサービスが用意されているのではなく、住民が自分たちで居心地の良い場所にしていくため少しずつ力を合わせているようだ。


もう一人は脳梗塞で倒れ不自由な身体になっても介護ヘルパーや友人の協力によって賃貸住宅に暮らしている梁容子さんである。梁さんは女性のための大工教室や漆作家として活動してきたが、今もときには友人とお芝居に行くなど生活を楽しんでいる。


もう一人は、手術や抗がん剤治療など行わず乳がんと最期まで共存した川口容子さんだ。川口さんは、介護保険による介護サービス、訪問医療および看護のサポートを使いながら最期まで自律的な生活を送った。また、映像では友人たちが季節のご馳走をつくって川口さんと食卓を囲むシーンが映し出されているが、考えられないくらい多数の友人たちがネットワークを組んで交代で生活を支えた。エンドウさんはPart1を制作している時は、こんなことが可能になるとは想像できなかったけれど介護保険を使いながら、自宅で最期を迎えることが可能になったと感じたと言う。


作品では、サポートした友人がインタビューで「川口さんは一瞬、一瞬を自分らしく生きてきた。だから自分らしい最期を迎えることができたのでは」という趣旨のことを語っている。確かにそうだろう。だれもが川口さんのように多くの友人を持ち、友人に最期まで支えられるとは想像しにくいが、でも、それは不可能ではないことを作品は示している。また一方で作品は、川口さんの人間力だけでそれが可能になったのではなく朝8時から夜10時までの公的サービスの存在が重要であることを示している。


上映会では、もう一つ驚いたことがあった。それは、昨年制作されたDVD「自分をとりもどす〜DVサバイバーからのメッセージ〜」で取り上げられた70代の女性が登場して、夫のDVから逃れ裁判による協議離婚(しかも途中で弁護士を替えて)をして、現在は自分と同じような立場の女性を支援する活動をしていることを生き生きと語ったことである。DVサバイバーという見えにくい存在を作品に取り上げたことも重要だが、また、実際にご自身の体験を話す姿を目の当たりにして、自分のなかにあるサバイバーのイメージが大きく変わったように思う。


私も考えてみればDVサバイバーや超高齢期の「おひとりさま」について、知らず知らずのうちに否定的なイメージを抱え込んでいる。一方で2作品は、経済的な不安や困難を抱えつつも、地に足を着いて、一瞬一瞬をどう生きるか選択しながら生きてきた人びとを取り上げており、そこからは「正解のない」社会的課題をともに考えていこうという制作者のメッセージを感じる。これからまず必要なことは、このような「正解のない」課題について共に語り合う対等な「場」だと思った。


ぜひ、またみなさんと一緒に見る機会があればと思う。なお、これらの作品はビデオ工房AKAMEから購入可能である。


『じんけんぶんかまちづくり』第42号(2014年3月)より許可を得て抜粋しました。



posted by wrapiy at 17:42| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | AKAMEの作品紹介・ダイジェスト版など | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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